藤田嗣治とは|世界が認めた「乳白色の画家」
藤田嗣治(1886-1968)は、日本で生まれながらフランス・パリで世界的な評価を得た洋画家です。
乳白色と呼ばれる独自の裸婦表現や猫を描いた作品で知られ、日本人画家として初めて世界的な成功を収めた画家の一人でもあります。
緻密なデッサン力と繊細な線描、そしてどの画家にも似ていない独自の表現は、現在でも多くの人を魅了し続けています。
一方で、その人生は栄光だけではありません。
戦争画を描いたことによる戦後の批判、日本画壇との確執、そして日本を離れフランスへ帰化するなど、激動の時代を生き抜いた画家でもありました。

自分だけの表現を求め続けた青年時代
1886年、東京府牛込区に生まれた藤田嗣治は、軍医だった父の赴任に伴い幼少期を熊本で過ごしました。
幼い頃から絵を描くことを好み、小学校時代にはその才能を周囲から認められるようになります。
14歳の時、画家になりたいという夢を父へ打ち明けると、反対されるどころか画材を買うためのお金を渡されました。
その支えを受け、東京美術学校(現在の東京藝術大学)へ進学します。
しかし、美術学校で黒田清輝の指導を受けても、自分の理想とする表現にはたどり着けませんでした。
藤田の作品は黒田から厳しく評価され、日本画の実習でも「洋画のような日本画」と評されます。
誰かの画風を学ぶことより、自分だけの表現を求める気持ちの方が、すでに強かったのかもしれません。
卒業後も国内では思うような評価を得られず、1913年、27歳で単身フランス・パリへ渡ります。
パリで「世界のフジタ」となる
パリでの生活は決して順風満帆ではありませんでした。
言葉の壁、差別、そして貧しい生活。
さらに第一次世界大戦が始まり、実家からの仕送りも途絶えます。
それでも藤田は絵を描き続けました。
ある日、ピカソのアトリエを訪れた藤田は日本で学んできた印象派がすでに過去のものとなり、新しい芸術運動が次々と生まれていることを知ります。
そこで、それまで学んできた表現を捨て、一から自分だけの絵を追い求める決意をしました。
1917年には初めての個展を開催。
やがてサロン・ドートンヌで作品が高く評価され、「世界のフジタ」と呼ばれる存在へと成長していきます。
この頃に完成した乳白色の裸婦像は、現在でも藤田嗣治を代表する画風として知られています。
戦争画と祖国との決別
1929年、一時帰国した藤田は日本国内でも大きな注目を集めます。
しかし、日本画壇はその成功を素直には受け入れませんでした。
その後、再び海外へ渡り、南米を旅した時期には、それまでとは異なる鮮やかな色彩の作品も多く制作しています。
1937年の日中戦争以降は戦争画を描くようになり、代表作『アッツ島玉砕』などを制作しました。
終戦後、戦争画を描いた責任を問われた藤田は、日本美術界との深い溝を感じ、日本を離れる決断をします。
1949年、日本を去り、その後二度と祖国の土を踏むことはありませんでした。
1955年にはフランスへ帰化し、国籍もフランスとなります。
最後にたどり着いた場所
晩年の藤田は、フランス・ランス近郊に建てられた「平和の聖母礼拝堂」の設計と壁画制作に人生最後の情熱を注ぎました。
建物の設計から内部のフレスコ画に至るまで、自らの理想を形にしたこの礼拝堂は、藤田嗣治の集大成ともいえる作品です。
完成から間もない1968年、81歳でその生涯を閉じました。
世界を舞台に生き、自らの芸術を貫き続けた人生でした。
私が藤田嗣治展で感じたこと
2018年に開催された「没後50年 藤田嗣治展」で、私は100点を超える作品を鑑賞する機会がありました。
中でも強く印象に残ったのは、乳白色の肌で描かれた裸婦像です。
思わず触れたくなるほど柔らかな質感。
繊細でありながら力強い線。
どの画家にも似ていない独特の世界観に、改めて「世界のフジタ」と呼ばれた理由を実感しました。
その後、美術品鑑定士として藤田嗣治の肉筆画に触れる機会もありましたが、作品を見るたびに感じるのは圧倒的なデッサン力です。
人物も猫も、まるで骨格から描き上げているかのような正確さがあります。
数多くの作品を見てきましたが、画家としての技術はまさに最高峰の一人だと感じています。
藤田嗣治の作品をお持ちではありませんか?
藤田嗣治の作品には、油彩画だけでなく、版画やデッサン、掛軸、挿絵などさまざまな種類があります。
作品によって評価は大きく異なり、保存状態や制作年代、付属品の有無なども査定額に影響します。
丸奈アートでは、一点一点の作品と丁寧に向き合い、経験をもとに査定しております。
「売るかどうかはまだ決めていない」
「価値だけ知りたい」
そのようなご相談も歓迎しております。
まずはお気軽にご相談ください。
関連ページ
・藤田嗣治という「怪物」|美術品鑑定士が世界のフジタに惹かれる理由
・取扱作家一覧

