山下清とは|放浪の旅で生まれた唯一無二の貼り絵画家

「放浪の画家」として知られる山下清(1922-1971)は、日本を代表する貼り絵画家の一人です。
代表作『長岡の花火』は教科書にも掲載され、多くの方が一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
細かく切った色紙だけで花火の光や夜空の奥行きを表現する圧倒的な色彩感覚は、今なお多くの人を魅了しています。
貼り絵だけでなく、色紙に描かれたペン画も数多く残されており、蜻蛉や蜂、魚、草花などを題材にした素朴で温かみのある作品も山下清の大きな魅力です。
思うままに旅を続けながら、自らの目で見た風景や出会いを作品へと昇華した山下清。
永遠の旅人であり、自由な魂をもって取り組まれた作品はどれも魅力に満ち溢れています。
幼少期と貼り絵との出会い
山下清は大正11年(1922年)、東京都浅草区田中町(現台東区)に生まれました。
関東大震災の影響で父の故郷の新潟へ移住するもその後、再び浅草区へ戻っています。
昭和7年に大酒のみだった父が中風で亡くなり、その頃清も重い消化不良により命の危険に晒される。
病気の後遺症もあり、幼少期から周囲との意思疎通が難しく、問題行動を起こすことも少なくありませんでした。
生活は苦しく、一家は転々と住まいを変えながら暮らしていました。
その頃、清にとって数少ない楽しみの一つが銭湯でした。
銭湯で目にした大きな看板絵や富士山の壁画は、後の豊かな色彩感覚に少なからず影響を与えたのかもしれません。
やがて現在の千葉県市川市の八幡学園へ入所すると、リハビリテーションの一環として貼り絵と出会います。
何事にも不器用だった清ですが、貼り絵だけは別でした。
細かく切った色紙や使用済み切手までも画材として使い、驚くほど繊細で豊かな表現を生み出していきます。
その才能は心理学者・戸川行男の目に留まり、展覧会で発表された作品は洋画家の安井曾太郎や梅原龍三郎からも高く評価されました。
放浪の旅が育てた芸術
18歳の時、山下清は八幡学園を飛び出し、日本各地を放浪する旅へ出ます。
その後の人生は、まさに「放浪の画家」と呼ばれるにふさわしいものでした。
旅先では、蕎麦屋や弁当屋、魚屋などで働きながら暮らし、多くの人々の親切に支えられて各地を巡ります。
巡った先では不思議と人との縁に恵まれ、困った時には必ず手を差し伸べてくれる人が現れたといわれています。
昭和30年代になると「放浪の天才画家」として全国的に知られるようになり、旅先で画材を贈られ、その土地の風景を作品として残しながら日本全国を歩き続けました。
旅で見た景色、人との出会い、季節の移ろい。
その一つひとつが、山下清の作品の原点となっています。
山下清の代表作品
- 『長岡の花火』 昭和25年
- 『自分の顔』 昭和25年
- 『田舎の精神病棟』 昭和25年
- 『大東亜戦争』 昭和24年
- 『江の島』 昭和24年
- 『富田林の花火』 昭和24年
- 『清の見たゆめ』 昭和33年
中でも『長岡の花火』は山下清を代表する作品として知られています。
色紙を一枚一枚切り貼りして描かれた花火は、貼り絵とは思えないほど繊細で、夜空を埋め尽くす光の広がりまで見事に表現されています。
また、放浪中に目にした日本各地の風景だけでなく、晩年にはヨーロッパを訪れ、海外の街並みも数多く作品として残しました。
人々に愛された「放浪の画家」
1956年には、新潟の医師・式場隆三郎の尽力により「山下清全作品展」が開催され、その名は全国へ広く知られるようになります。
その後は放浪の日々も次第に少なくなり、巡回展や制作活動を中心とした生活を送りました。
1971年、脳出血のため49歳で死去。
生涯独身でした。
自由を愛し、日本中を歩き続けた旅人は、静かにその人生を閉じます。
しかし、その作品は今なお多くの人に愛され続けています。
貼り絵一枚一枚には、旅先で見た風景だけではなく、人との出会いや優しさ、そして山下清自身の純粋な心が映し出されているように感じられます。
だからこそ、半世紀以上が過ぎた今もなお、多くの人の心を惹きつけてやまないのでしょう。
関連作家
・安井曾太郎
・梅原龍三郎
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